森山大道「新宿」

〜研ぎすまされたモノクロームの都市〜 写真界に生ける伝説として君臨する森山大道。 過剰とも言えるハイコントラストなプリントと、日常に介在する不安をえぐるような被写体。一目見て彼の手による作品だとわかる作品群は、アートと呼ぶにはあまりにも重く…

ことば「極北」

〜ウルティマ・チューレとは何か〜 例えば「日本人ギタリストの極北」などという表現を雑誌や本で良く見かける。 なんとなく「最高到達点」的な意味だろうなーなんかかっけーなーと考えていたのだが、最近自分で文章を書いていて使用しようと思い、ふと気に…

光文社新書「就活のバカヤロー」

〜生肉のまずさを知れ〜新書は現代の出版業界においてかなり大きな存在になりつつある。文学はとっくの昔にサブカルみたいなもんになってしまい、雑誌は部数が下げ止まらない中でそれなりの存在を示している。雑誌にちょっと足した値段で、ビジネスマンの通…

スタンダール「赤と黒」

〜全人類マストな恋愛小説〜 今さら語るまでもない世界文学の傑作。2007年に出た野崎歓の新訳が誤訳だという話で話題になったが、僕が読んだのは学研の世界文学全集に収録されている古屋健三訳。 赤と黒〈上〉 (岩波文庫)作者: スタンダール,桑原武夫,生…

佐藤春夫「美しき町」

〜建築マニアの幸福な小説〜 佐藤春夫がどんな作家かと定義するのは難しい。大正中期から昭和30年代と活動期間が長く、「田園の憂鬱」のような純文学作品から「神々の戯れ」のようなエンターテイメント色が強い作品まで広い作風で小説を書き、詩人でもあっ…