光文社新書「就活のバカヤロー」

〜生肉のまずさを知れ〜

新書は現代の出版業界においてかなり大きな存在になりつつある。文学はとっくの昔にサブカルみたいなもんになってしまい、雑誌は部数が下げ止まらない中でそれなりの存在を示している。雑誌にちょっと足した値段で、ビジネスマンの通勤のお供になってくれる結構優秀な稼ぎ頭だったり。

本屋に平積みされていて、なおかつ個人的にタイムリーだったので購入したのがこの「就活のバカヤロー」だ。

就活のバカヤロー (光文社新書)

就活のバカヤロー (光文社新書)

イタすぎる現代の就活生、金太郎あめ的エントリーシートにうんざりの企業、嫌々就職支援をする大学、そして学生を煽ることで必死に生き延びようとする就職支援企業。就職活動を取り巻く問題点を様々な視点から研究し、まずい生肉でも誰かが手を付ければどんどん食べざるを得ない「焼き肉の生焼け状態」に問題提起をするべく書かれたセンセーショナルな一冊。

非常に面白い。1時間半もあれば読み終われるくらいだ。内容は具体的かつ現場に近い話ばかりなので掴みやすく、多かれ少なかれ企業に勤める人には関係がある話ばかりだ。作者の語り口もノリが良く、悪く言えば個人的な主観も目立ってしまうのだがそれはそれで一つの意見として参考になる。
本質的には就職活動は学生が企業を選ぶという側面があるにも関わらず「市場」と化してしまっている。原因として作者は就職をとりまくすべての環境の問題を挙げている。学生、企業、大学、就職ビジネスの四つの現場全てがまずい生肉を食べ続けなければならない負の連鎖。現場取材によって得た生の声で構成されたその実態は痛々しい。作者は問題点は指摘しつつも結局具体的な対策までは触れることができておらず、無論この本を読んだところで解決を望むのは無理である。しかしながら現場を知った上で戦いに望めるのは強い。就職活動に携わる人々は読んでおいて決して損はしない良書である。